サッカーチームを強化したいが、選手のレベルは高いとは言えないし、練習時間の確保も
難しいので、練習量を増やすのにも限度があるといったケースは珍しくありません。
強い選手が数多く在籍し、十分な練習環境が整っていて、練習時間が十分に確保できる上
に、良質な指導者が何人も揃っている強豪サッカーチームであればまだしも、多くは一つ
すら実現できていない状態ですから、普通に日々の練習に取り組む限りは、強豪チームに
勝つことは不可能でしょう。
強豪チームと練習試合をしては大敗、公式試合でも勝つほうが珍しいという状態かもしれ
ませんね。
元サッカーU-20日本代表で、腰の怪我で現役続行を断念した後は、教員として広島県内
の公立高校で教鞭を振るう畑喜美夫さんは、広島観音高校、安芸南高校とサッカー弱小校
を次々と全国屈指の強豪チームに育て上げることに成功しています。
どちらも普通高校であり、サッカー推薦などは一切なく、弱小サッカーチームだった状況
からチーム力を地道に強化したわけですが、畑さんはどのようにしたのでしょうか?
弱小チームを鍛え上げるというと、毎日、長時間の練習で鍛え上げるといったイメージが
つきものですが、畑さんが監督を務める高校では全体練習は週2回のみと少ないです。
練習をしすぎることでオーバーワークになって体を壊してしまう可能性があるのと、練習
時間を絞ることで、練習中の集中力が高まり、質の高い練習ができるようになるという点
がポイントです。
これらのベースにあるのが、選手が主導してチーム運営をおこなう「ボトムアップ理論」
です。
指導者が一方的に練習メニューやカリキュラムなどを押し付けるトップダウンとは正反対
の概念として説明されることが一般的ですが、サッカーに関する知識や経験が乏しいのに
高校生に任せてもいいのかといった反対意見も根強い中で、畑さんがボトムアップ理論を
導入した結果、短期間での大きなチーム力強化につながったわけです。
「子どもには、難しすぎる」というのは、大人の勝手な思い込みでしかありません。
ボトムアップ理論を導入したサッカー指導者は、チームのあまりの変革に驚くといいます。